思春期のころ、17歳の少年が若き妙齢の女性と恋に落ちる、「青い麦」という題の映画があった。
 ところで、17歳の少女が母の内縁の夫と深い仲になった、これは鹿児島県青少年保護育成「いんこう条例26条違反」という犯罪となる(2年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。

 13歳未満の少女がたとい真摯に承諾同意していても、13歳未満の少女は、性行為の内容を判断理解し、その結果を認識する能力に欠ける、あるいは、劣るということで、承諾同意能力がないとされ、関係を持った男は強姦罪(刑法177条後段 3年以上有期懲役)が成立する。

 また、未成年(13歳以上)を相手とした成人男性ないし女性は、「反抗を抑圧する程度の暴行脅迫」もしていない場合は、強姦罪とはならず、淫行条例によって処罰されることになる。当然、内縁の母は、いやがる娘の耳を引っ張りながら警察署に赴き内縁の夫に対する恨み、男性を嫉妬で「強姦罪」で告訴した。

 その後、少女が成人男性と50回以上の性交渉をもったとして、警察は「いんこう条例」違反(県条例)で検察官に身柄送検したが、検察官は、捜査の途中で強姦罪で罪名変更して、起訴した。

 検察官は、第1回目の性交渉を強姦行為とみなし、第2回目から第50回目までは、特に起訴の対象から外すこととした。そして、男は少女に対し「あたいの言うこつ聞かんといけんなっか知たーんど」という、脅迫文言を言ったとして、強姦罪に該当すると構成したのである。

 男性と少女の法定代理人母親は、高額の示談金を支払い、告訴取下を願っても、親告罪である強姦罪については起訴後は、告訴取消はできないとの刑訴規定(刑訴法第237条1項)である。

 ところで、被害者の告訴により、強姦罪の被疑事実で起訴となった者のうち、約17パーセントは、えん罪と言われているのが、アメリカの犯罪学の成果である。

 浮気をした彼女や妻が恋人や夫との不和を恐れて、彼女の恋人や夫に対し、相手の男性から強姦されたと弁明し、男は女性と情を通じた和姦であっても強姦罪の汚名を着ることになる。

 娘が厳格な父親に折檻されるのを恐れ、あるいは、母の内縁に夫と関係を持ってしまったことに弁解のすべが無く、やはり、強姦されたと告訴をしたりする。
 冒頭に記載した17歳の少女の情事は、まさしく、後者であった。

 少女の隣のふすま越しに兄妹が団らんしている隣室にて、内縁の夫が犯行を抑圧する程度の暴行脅迫がなされたという、といえる状況があったのか、誰が考えてみても分かる。
                                     
                                                  以     上
  



死体の叫び

カテゴリー: 刑事

 確かに、人は、死ぬために生まれてくる。だから、人の死に様は、まさに、その人の生き様やその延長に反映されていると言っても、過言ではない。 

 人は、老衰により天寿を全うすること自体まれなことである。病気や事故に巻き込まれて、痛恨の晩年を送ったり、不慮の死に至ることもあろう。

 ところで、「死体は、語る」という東京監察医上野氏の著作があり、その後、法歯学者や法医学者(例えば高濱教授の『訴える死体』)が事故死や変死の死体と対峙して、死体の氏名の特定を死因(自然死、事故死か犯罪死かの原因を検死や鑑定許可令状に基づく司法解剖)を探った経過を、綴った著作が多数に上ってきた。

 私も司法修習時代、数件の司法解剖や検死に立ち会った。最初は、死体は恐怖の対象であり、司法解剖のあった日は、死体が蘇って迫ってくるという夢も見た。脳溢血死、夫婦げんかから文化包丁による刺殺、浅い側溝での若い女性の溺死、焼死、そこには、死体が語り、訴え、叫んでいる生々しい現実があった。

 犬が加えてきた一体の真っ白い頭蓋骨、あご骨は欠落している。真っ白い頭蓋骨の口元には、八重歯がきらりと光っていた。刑事は、数キロに亘って、頭蓋骨の持ち主の他の上肢、下肢、胴部の死体を求めて捜索したが、発見できなかった。

 捜査が終了する間際、頭蓋骨を加えてきた飼い犬の持ち主宅から200メートルも離れていない藪や雑木の生い茂る林の中に、右腕の失われた胴体、下肢が発見された。
 との情報で、私は、刑事、検察官とともに現場に急行した。

 さて、頭蓋骨の持ち主の死体なのか。死体は、誰か。
 胴体の上部には、高所に太い枝があり、ロープがかかり、飲みかけのコーラ缶と車や居宅のキーホールダー一式が散乱していた。そして、左腕には、カシオのデジタル時計が今なお時を刻んでいた。

 死体の残部分を全て警察署に持ち帰り、裏庭に部位別に並べ、死因は状況からして自殺死であることは容易に想像される。司法解剖により死因を敢えて特定する必要はあるか、コーラ缶に有機水銀等の毒薬があり、犯罪死の可能性もありうるのか。

 司法解剖費用は、当時8万円前後であったと記憶するが、司法解剖の必要性はなしとのことで、当日の現場検証、検死手続は終了した。

 後日、死体の持ち主が特定されたとの刑事からの情報が入り、警察署に出向いたところ、刑事のデスクの上には、白い八重歯のきらりと光る頭蓋骨とその横にその頭蓋骨の持ち主の同じ形状をした八重歯が撮影されている肖像写真が並べてあった。

 家出人捜索願いの写真集から発見した写真であった。
 そして、死体の側から発見されたキーの車は、死体発見現場から10数キロメートル離れたところに駐車してあり、その車両の所有者は、X氏であり、死体もX氏と特定されることとなった。

 死体は、失恋の苦悩からくる縊死であることを、写真の八重歯は優しい表情を哀しく物語るものの、その実、命を喪うまでに精神的に追い詰められた苦痛を叫んでいたのだった。

                                                     合 掌



        告訴すれば、必ず起訴されるのですか。

 犯罪によって被害をこうむれば、相手方犯罪者に刑事責任を取ってもらおうと望むのが、人情だ。
 性犯罪のように被害者の名誉が関係すれば、捜査側は、被害者の意思を無視して、犯罪を起訴に持ち込むことはできない。すなわち、例えば、親告罪として告訴が起訴の要件となっている。

 ただし、告訴した後、起訴後示談が成立しても、もはや、被害者は、告訴を取り消すことはできない。
 被害者でないもの、公的な必要がある場合でも、告発することはできる(捜査権の発動を促す)。
 告訴しても、微罪な事件、被害者が犯人を赦している場合、また、嫌疑不十分な事件については、検察官は、不起訴することはある。

 しかし、立件が困難であり、証拠に乏しい事件、公訴時効が差し迫った場合、民事不介入など理由を付けて、告訴状不受理としたり、すなわち、告訴状提出で留意すべきは、捜査官(警察署ないし検察庁)が告訴状をあれこれ理由を付けて受理しない場合もあり、不起訴とする場合もである。つまり、告訴しても、不起訴となる場合である。
 
 検察官に対し、警察署を経ず直接告訴することもできる(直告)。検察官は、警察に捜査開始を意見具申し、自ら直接捜査に関与することもある。告訴状を受理した以上、最終処分に対しては、被害者ないし告訴者に対し、起訴如何、裁判の結果につき通知を求めることもできる(検察官の裁量によるが)。

 また、更に、検察官の不起訴決定、更に、検察審査会で不起訴相当の議決に対しては、検察審査会に対して強制起訴をするべく求めることもできる。しかし、起訴を義務づけることを強いる、強制起訴制度自体は、違憲の疑いがあるとの議論もある。

 なお、従前の制度では、検察審査会での起訴相当の答申に対しては、検察官を義務づけることはできないことになっていた。



 かつて、良い刑事政策は、良い社会政策と言われていた。犯罪者に刑を科す刑の目的は単に応報ではなく、再犯防止にあるとも言われた。今は、裁判員裁判になって、量刑が重くなった、被害者本人・家族の怒りを、検察官も裁判員も代表しているのだとも。
 けれど、過度に重罰化する傾向は、犯罪から国家・国民を守るという制度からすれば、疑問にも思える。それに、弁護士は、犯罪者の弁護人という位置づけから、公判廷でも被害者を支援する場面で、刑事被告人として対峙するのは、若干不自然な感じもする。違和感を感ずるのは私だけなのかな。 k.k